レンタカー業界は今、深刻な人手不足と経営効率の低下という課題に直面しています。
繁忙期にはスタッフの負担が増大し、予約対応や受付業務に追われる現場が少なくありません。
その一方で、設備投資や業務効率化を進めたくても、資金的な余裕がない事業者も多いのが現状です。
しかし、こうした悩みは「補助金」をうまく活用することで、大きく改善できる可能性があります。
国や自治体が提供する補助金制度を活用すれば、初期費用のハードルを下げ、無人チェックイン機のような省人化設備の導入を無理なく実現できます。
今回の記事では、補助金の基本的な仕組みから、レンタカー事業での活用が見込まれる補助金制度、そして設備導入によって予想される効果について、初めての方でも理解しやすい形でご紹介していきます。
現代のユーザーは、効率的でスムーズなサービスを当たり前のように求めています。
特に旅行シーンでは、限られた時間内でのスムーズなレンタカー利用が重要視されます。
人手をかけず、ストレスなく貸渡し手続きを完了させる仕組みの構築は、今後の経営において不可欠な視点です。
ユーザーの行動変化も見逃せません。
スマートフォンでの予約・受付や、チェックイン機での手続きに対する抵抗感は薄れており、むしろ「便利」「手間が少ない」といった理由で歓迎される傾向にあります。
省人化は顧客満足度の向上にも直結します。
競争が激化する中、レンタカー事業者が生き残るためには、単に価格で勝負するのではなく、効率的な運営や差別化されたサービス提供が重要です。
そのためにも、DX(デジタルトランスフォーメーション)=業務のデジタル化は避けて通れません。
<参考記事>
レンタカー業務におけるオペレーション最前線【DX・予約管理システム】
補助金の最大の魅力は、「返済不要」であるという点です。
借入とは異なり、条件を満たして採択されれば、一定額の経費を公的資金でまかなうことができます。
特に設備投資に関しては、1/2〜2/3の補助が受けられる制度も多く、小規模事業者にとっては非常にありがたい支援策です。
また、補助金の申請には計画書の提出や見積もりの提示が必要となるため、事業の方向性を見直す良い機会にもなります。
単なる資金援助だけでなく、事業戦略の見直しを通じて経営の再設計にもつながる可能性があるのです。
補助金は、国や自治体が民間企業に対して「こういった取り組みをしてほしい」という政策的意図を持って支援する制度です。
多くの場合、申請者の中から審査によって選ばれた事業者のみが受給できます。
助成金は、労働環境の改善や人材育成といった、社会的課題の解決に向けた取り組みに対して支給される資金です。
条件を満たせば受給できるケースが多く、採択率は補助金より高い傾向にあります。
参考:補助金と助成金の違い
レンタカー事業者にとって、DX化や省人化を進める際に「補助金」は非常に有効な支援策となります。しかし、補助金制度には以下のような注意点があります。
多くの補助金は、年度ごとに予算が組まれ、公募期間が設定されています。
そのため、「現在は募集をしていない」場合や、「年度途中で予算上限に達して募集が終了する」ケースも少なくありません。
一度終了した制度でも、国や自治体が補正予算を組むことで再募集が行われることがあります。
過去の採択実績がある制度であれば、年度ごとに募集の有無を確認することでタイミングを逃さず申請できるチャンスが広がります。
補助金には対象業種・地域・事業規模などの「要件」が設定されています。
レンタカー事業であっても、条件によって申請できない場合もあります。
ここからは、実際にレンタカー事業での活用が見込まれる具体的な補助金制度を4つご紹介します。
それぞれ目的や対象、補助率が異なるため、自社の課題や導入したい設備に合わせて最適なものを見つけるための参考にしてください。
今回紹介するレンタカー事業に利用できそうな補助金は以下の4つです。
なお、本記事で紹介している補助金制度は、すべてのレンタカー事業者が対象となるとは限りません。
対象業種・地域・事業内容などの要件により、補助の対象外となる場合があります。
また、補助金にはすでに募集が終了しているものや、募集開始を予定しているものも含まれます。
申請をご検討の際は、必ず公募要領や最新の募集状況をご確認のうえ、詳細は各実施機関へお問い合わせください。
※情報は2025年8月時点のものです。申請の際は、必ず公式サイトで最新の公募要領をご確認ください。
中小企業・小規模事業者の業務効率化や労働生産性向上を目的とした制度で、業務システムやクラウドサービス利用料(最大2年分)などのITツール導入にかかる費用を支援する補助金です。
補助対象となるITツールは、事前に審査・登録されたもので、IT導入補助金の公式HPに掲載されているツールのみが対象となります。
また、補助金の申請には「IT導入支援事業者」として事務局に登録されたITベンダーと連携することが必須条件となっています。
※公募は複数回の締切が設けられており、申請する枠や類型によってスケジュールが異なります。最新の募集状況は必ず公式サイトでご確認ください。
公式ページ:IT導入補助金
<参考記事>
レンタカー事業者必見!IT導入補助金の賢い活用法【2025年最新版】
この事業は、地域の交通資源を有効活用し、観光課題や交通利便性の改善を支援するための制度です。レンタカーを活用した観光客の移動支援や、送迎車両・受付機器の導入などが支援対象に含まれます。
観光地に営業拠点を持つレンタカー事業者にとっては、地域連携を強化する上で活用価値の高い制度です。
※令和7年度(2025年度)の募集は終了しましたが、来年度以降も同様の事業が公募される可能性があるため参考として掲載します。
参考:令和7年度 地域輸送資源活用推進事業 公募要領
公式ページ:地域輸送資源活用推進事業
交通事業者がデジタル技術を活用し、サービスの利便性向上や業務の効率化、省人化を図る取り組みに対して支援する制度です。
レンタカー事業では、多言語対応やキャッシュレス決済への対応、受付業務の省人化といった施策が補助対象となり、顧客満足度向上と業務負荷軽減を両立するための有効な支援策です。
本補助金は複数の事業で構成されています。
レンタカー事業者が主に活用しやすいのは「交通サービス利便向上促進事業」で、多言語対応機器やキャッシュレス決済機器の導入などが対象です。
一方、「観光二次交通の高度化事業」は、公共ライドシェア/日本版ライドシェアの導入を支援する事業で、レンタカー事業者は対象外です(対象主体・メニューが異なります)。
※最新の公募要領や公募期間・二次募集の有無は年度内で変動するため、公式サイトで最新情報を確認してください。
この補助金制度は、以下の5つの事業に分かれており、目的に応じて活用できる仕組みになっています。
1.バリアフリー化設備等整備事業
2.交通DX・GXによる経営改善支援事業
3.交通サービス利便向上促進事業
4.地方ゲートウェイの刷新事業
5.観光二次交通の高度化事業
上記のうち「3.交通サービス利便向上促進事業」は、レンタカー事業者も対象となる補助金制度であることが明記されています。
多言語対応やキャッシュレス決済など、観光地における利便性向上を目的とした設備導入が支援対象となるため、該当する事業者にとっては非常に有効な制度といえます。
各事業は、交通インフラのデジタル化や利便性向上、観光地での回遊性強化などを目的としており、レンタカー事業者は自社の課題や目的に応じて、最適な制度を選ぶことが重要です。
参考資料:別表第1・第2
公式ページ:交通DX・GXによる経営改善支援事業等補助金
観光地における移動の不便さを解消し、周遊性を高めることを目的とした支援制度です。
本事業は観光庁の事業で、先述した「交通DX・GXによる経営改善支援事業等補助金」の「観光二次交通の高度化事業」(国土交通省の事業)とは別のものになります。
観光客の回遊を促す新たな交通手段の導入や、地域の移動利便性向上を図るための機器・サービスが補助対象となります。
レンタカーを活用した地域交通インフラの強化を図る企業にとっては、地域全体の価値向上にもつながる施策です。
※公募状況は観光庁の公募一覧で随時更新。現在も募集を行っているかどうかは公式ページをご確認ください。
参考資料:令和7年度観光庁関係予算概要
公式ページ:二次交通の高度化事業
これまでの説明で、補助金が初期投資を抑え、DX化を力強く後押しする魅力的な制度であることはお分かりいただけたかと思います。うまく活用すれば、事業成長の大きな起爆剤となることもあります。
しかし、その一方で、申請手続きの手間や注意すべき点も存在します。メリットだけに目を向けて計画を進めてしまうと、「こんなはずではなかった」という事態に陥りかねません。
補助金活用を成功させるには、良い面(メリット)と注意すべき点(デメリット)の両方を事前にしっかりと把握し、現実的な計画を立てることが不可欠です。この章では、申請前に知っておくべき双方の側面を具体的に整理してご紹介します。
補助金の大きな魅力は、費用の一部(場合によっては最大2/3)が補助される点です。
自社で全額負担するよりもリスクを抑えて新しい取り組みを始めやすくなり、設備投資に対する心理的ハードルも低くなります。
補助金の対象となる設備やシステムは、DXや省人化を前提としたものが多いため、導入を通じて業務全体の見直しが進みやすくなります。
単に機械を導入するだけでなく、業務プロセスそのものを見直す良い機会になります。
補助金の申請には事業計画書や導入効果の記述が求められます。
これにより、事業の方向性や課題、目指すべき姿を明確に言語化する機会となり、社内での意思統一や中長期戦略の策定にも役立ちます。
補助金の申請には、事業目的・導入内容・費用見積もり・導入後の効果などを詳細に記述した書類を準備する必要があります。
慣れていない場合、申請準備に多大な労力を要することもあります。
補助金は審査制のため、応募しても必ず採択されるわけではありません。採択率は制度によって異なり、人気のある制度ほど競争率が高くなる傾向があります。
不採択となった場合のリカバリープランも考慮しておく必要があります。
補助金はあくまで「一部補助」であり、全額が支給されるわけではありません。
また、補助金の支給は事後精算(後払い)が一般的なため、一時的に全額を立て替える必要があり、資金繰りへの影響も考慮が必要です。
補助金を受け取った後も、導入後の効果や事業の進捗を報告する義務があります。
提出書類の形式も定められており、適切に管理しないと返還を求められるケースもあるため注意が必要です。
ここまでご紹介してきた補助金を活用することで、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。
たとえば、KAFLIX CLOUDが提供するレンタカー用チェックイン機を補助金を活用して導入すると、レンタカー店舗の受付業務が大幅に効率化されます。
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これまでスタッフが対応していた予約確認や免許証チェック、契約手続きなどを、ユーザー自身がタッチパネル操作でスムーズに行えるようになります。
その結果、従来受付に配置していたスタッフを、洗車・車両準備・返却対応といった他の重要業務に回すことができ、店舗全体の運営効率が向上します。
また、チェックイン機による処理はスピーディかつ正確で、書類記入ミスや説明漏れといった人的ミスのリスクも軽減されます。
さらに、多言語対応・顔認証・免許証スキャン・電子契約書の自動送信といった機能を備えており、紙ベースの手続きが不要になり、店舗のペーパーレス化、省スペース化や業務負担軽減にも貢献します。
このように、補助金を活用して省人化設備を導入することで、店舗の効率化とサービス品質の向上を同時に実現できる可能性があります。
導入を検討されている方は、以下より詳細をご確認ください。
業務の省人化や効率化を進めたいと考えていても、「うちは無理かもしれない」と感じているレンタカー事業者の方も多いかもしれません。
しかし、補助金制度を活用することで、その「最初の一歩」を踏み出すハードルは大きく下げることができます。
制度は毎年更新されるため、国の公式サイトや補助金ポータルサイト、自治体のホームページなどで最新情報をこまめにチェックすることが重要です。
「知らなかったから使えなかった」とならないよう、アンテナを高く張っておくことが第一歩です。
補助金にはそれぞれ目的や対象事業が定められています。
自社の現状や今後の投資計画に照らし合わせ、「何を導入したいのか」「何を改善したいのか」を明確にし、それに合った制度を選定することが成功への近道です。
一部の自治体では、国の制度に加えて独自の補助金制度や上乗せ補助を行っている場合があります。
特に観光地や都市部では、観光振興・地域交通強化などの目的で制度が設けられていることもあるため、都道府県・市町村レベルの支援情報にも目を向けましょう。
補助金の申請には事業計画書や効果見込みの記述、書類の整合性チェックなど手間がかかります。
最近では、申請を支援するコンサルタント会社や商工会議所などのサポートサービスも充実してきており、初めての方でも安心してチャレンジできます。
補助金は「事業成長の追い風」として活用できる非常に有効な手段です。
「使える制度を知り、自社に合った方法で活用する」ことこそが、DXの第一歩となるでしょう。