採用難が常態化?中小レンタカー店舗が直面する人手不足の現実
「求人広告を出しても応募が来ない」
「せっかく採用してもすぐ辞めてしまう」
中小レンタカー店舗の現場では、こうした声が日常になりつつあります。
特に地方では労働人口の減少と若年層の都市流出が重なり、募集しても応募すら来ない状況も珍しくありません。
結果として、経営者や店舗責任者が配車や洗車、受付まで現場作業に入らざるを得ず、本来担うべきマネジメントや改善業務に手が回らないという悪循環が生まれています。
このような人手不足の問題は、レンタカー業界だけでなく観光・宿泊・飲食業界でも共通しており、政府も補助金制度などで対策を講じ始めています。
そこで今回の記事では、求人媒体の使い分けや補助金制度の活用法、教育マニュアルの整備、柔軟な雇用制度の導入、業務負担を軽減するためのツール活用など、実践的なお役立ち情報をご紹介します。
まず見直したいのは、求人媒体の選び方と使い分けです。
大手求人媒体(インディード、マイナビなど)は広く露出できますが、地域密着の紙媒体やフリーペーパー、ハローワークのような地元志向の求職者にリーチできる手段も有効です。
また、最近注目されているのがタイミーのような隙間時間で求人応募できるサービスです。短時間で即日勤務できる柔軟性から、登録者数が急増しており、洗車や配車といった短時間業務と相性が良い点も魅力です。
実際に、ある地方のレンタカー店舗では「平日の午前中だけ手伝ってくれる人がいれば助かる」といったニーズに応え、タイミー経由でスタッフの確保を継続的に行っているようです。
「隙間時間」に働きたい層と、短時間でも人手が欲しい店舗のニーズがマッチした好例といえるでしょう。
求人は「媒体の組み合わせ」と「役割に応じた募集方法」の工夫が求められます。
従来のフルタイム・長時間労働を前提とした雇用形態だけでは、今の時代に合った人材を確保するのは難しくなってきています。
特に最近では、自分のライフスタイルに合わせて「午前中だけ働きたい」「子どもの送り迎えがあるから夕方までに終えたい」といった希望を持つ求職者も少なくありません。
この章では、短時間勤務の導入やシフトの柔軟化、また、国籍や年齢にとらわれない多様な人材の受け入れなど、現場で実践できる雇用制度の工夫について解説します。
あるレンタカー店舗では、子育て中の主婦をはじめ、学生や副業を希望するダブルワーカー層にも対応した「午前中のみの勤務可」「週2日からOK」「夕方以降のみの勤務可」といった柔軟な勤務体系を導入し、繁忙期のスタッフ確保に成功しました。
これにより、授業の合間に働きたい学生や、本業のない時間に副収入を得たい社会人など、今まで就労をあきらめていた層の就業機会を創出できるようになりました。
短時間勤務の導入は、店舗にとってもスタッフにとっても無理のない雇用関係を築く手段として有効です。
このような短時間勤務希望者に対しては、業務の切り出しによって、戦力として活用することが可能です。
これらの業務は、短時間でも対応可能であり、未経験者でも比較的スムーズに習得できる内容です。
業務の切り出し方次第で、短時間勤務者を効果的に戦力として活用することが可能になります。
観光客が多い地域の店舗では、日本語を日常会話レベルで話せる外国人留学生をアルバイトとして採用
多言語対応が必要な受付業務で戦力として活躍しており、コミュニケーション能力と接客態度の良さで顧客満足度向上にも貢献しています。
ただし、外国人労働者を雇用する場合には、在留資格の確認や労働条件の明示、日本語マニュアルの整備など、受け入れ体制の準備も欠かせません。
文化的な違いや業務理解の違いによる誤解を防ぐためにも、事前の丁寧な教育とコミュニケーションの工夫が重要です。
詳細については、以下の厚生労働省のガイドラインを参考にしてください。
参考:外国人雇用のルールとポイント(厚生労働省)
高齢者層の中には「まだ働きたい」「社会とつながっていたい」という意欲を持つ方が多く、特に退職後も元気な方や地域活動に参加しているシニア層は、一定の就労意欲を持っています。
たとえば、ある地方店舗では、朝の時間帯に洗車と車両移動をシニアに担当してもらい、体力的な負担が少ない時間と業務内容を設定することで、継続的に働いてもらうことに成功しています。
また、地元出身のシニアで土地勘がある方は、配車業務でも頼りになる存在となります。
このような取り組みによって、シニア層を無理なく継続的に雇用し、戦力として活用することが可能になります。
シニア層の就職支援には、シルバー人材センターなどの就業支援団体も活用できます。詳しくは以下のリンクをご参照ください
人が集まらないなら、「採用した人をいかに早く戦力に育てるか」が重要です。
そのためには、業務マニュアルの整備が不可欠。たとえば、接客マナーや貸出・返却の手順を5分程度の動画にまとめたり、洗車業務の流れを写真付きのチェックリストとして掲示することで、未経験者でも短時間で仕事の流れを把握できます。
特に近年は、紙よりも動画マニュアル(業務ツールの操作方法や業務の流れを動画撮影したものでも可)やチェックリストの活用も有効です。
未経験者でも動画を見れば業務の流れが理解でき、店舗スタッフにかかる教育負担も軽減されます。
「覚えることが多そう」と感じさせない仕組みが、応募意欲の向上にもつながります。
また、業務を属人化させず、誰でも同じ水準で対応できる体制を整えることが、人材不足を補ううえで重要です。
【参考記事】
【レンタカー】予約が埋まってもスタッフが足りない…繁忙期を乗り切る業務効率化のコツ
もし新しい人手の確保に割く資金が不足している場合は、補助金制度の活用も検討してみると良いでしょう。
たとえば沖縄県の場合、那覇市をはじめとする自治体では、事業者の人手不足対策を支援する補助金制度が用意されています。
「令和7年度 那覇市人手不足対応支援補助金」では、人不足を補うための業務転換または省人化のための設備導入等に、総事業費の3分の2以内(上限100万円)の支援補助金を申請することが可能です。
※これはあくまで一例です。お住まいの地域を管轄する自治体や商工会議所でも、同様の支援制度が用意されている場合がありますので、ぜひ一度ご確認ください。
「人手不足で現場が上手く回っていない」と感じる場合こそ、一度自治体や公的機関の補助金を検索してみることをおすすめします。
知られていないことも多いですが、人手不足対策のための設備導入で利用できる公的補助金は複数存在しており、うまく活用することで採用にかかる負担も大きく軽減できる可能性があります。
最後に紹介するのは、業務そのものを効率化し、人手に頼りすぎない店舗運営を実現するツールの導入です。
たとえば、出発時の手続きを省力化する端末や、予約情報・貸出状況を一元管理できる業務管理ツールの活用が挙げられます。これにより、受付対応や台帳管理にかかる工数を削減し、限られた人員でもスムーズな店舗運営が可能になります。
KAFLIX CLOUDが提供するレンタカー用チェックイン端末は、受付業務を機械が人間の代わりに対応し、来店者の待ち時間を短縮します。
さらに、レンタカー業務システム「REborn」は、レンタカー用チェックイン端末と連動して車両の予約、配車状況、売上分析などを一元管理できるため、店舗全体の業務効率を大幅に改善できます。
このように業務システムの導入やチェックイン端末の導入は、業務の属人化を防ぎ、どのスタッフでも同じ業務水準を保てる運営体制の構築にも役立ちます。
【参考記事】
・レンタカーの車両管理をもっとラクに!REbornでできる効率化ポイント
・セルフチェックイン機でレンタカー受付を効率化!人手不足解消と業務効率UPを実現
人手不足は、多くの中小レンタカー店舗が抱える共通の悩みです。
しかし、「求人しても人が集まらない」と悩んでいるだけでは、現状を変えることはできません。
求人媒体の見直しや柔軟な雇用制度、教育体制の整備、補助金の活用、業務効率化のためのツール導入など、現場ですぐに取り入れられる対策は意外と多くあります。
「求人しても来ない」と嘆く前に、まずは今回ご紹介した5つの対策から、自店舗に合うものを1つでも実践してみてください。
それが、業務負担の軽減と持続可能な店舗運営への第一歩になります。人手不足という課題に対しては、まず一つずつ取り組むことが何よりも大切です。
即効性のある解決策ではなくても、地道な工夫と試行錯誤の積み重ねが、長期的な人手の確保と業務の安定化につながります。