

これまで「IT導入補助金」と呼ばれてきた制度は、2026年度から「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」(通称:デジタル化・AI導入補助金)へと名称が変わりました。レンタカー事業者の視点で押さえておきたい変更点は、大きく次の3つです。
加えて、2022〜2025年度に交付決定を受けた事業者には、翌事業年度以降3年間にわたり「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、日本銀行の物価安定目標2.0%+1.5%以上(年平均3.5%以上)向上させる」事業計画の策定と、賃金引上げ計画の従業員への表明が、新たな申請要件として追加されました。一度活用したことのある事業者ほど、再申請前に確認すべき点が増えています。本記事では2025年版との違いを比較しながら、レンタカー事業者が申請前に把握しておきたい変更点と準備手順を整理します。
出典:中小企業庁 公募要領公開のお知らせ、デジタル化・AI導入補助金2026 制度概要

2026年度の制度改正は、単なる名称変更ではありません。中小企業庁は改称の理由を「ITツールの導入にとどまらず、より踏み込んだデジタル化の推進及びAIの活用が重要であることを広く周知する観点から、補助金の名称を変更した」と説明しています(出典:SMRJ 2026概要発表)。
レンタカー事業者の視点でまず確認したい変更点を、2025年版と並べて整理しました。
| 項目 | 2025年版(IT導入補助金) | 2026年度版(デジタル化・AI導入補助金) |
|---|---|---|
| 制度名称 | IT導入補助金 | デジタル化・AI導入補助金 |
| 正式名称 | サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金 | 中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金 |
| 申請枠の構成 | 通常枠/インボイス枠(インボイス対応類型)/インボイス枠(電子取引類型)/セキュリティ対策推進枠/複数社連携IT導入枠 | 通常枠/インボイス枠(インボイス対応類型)/インボイス枠(電子取引類型)/セキュリティ対策推進枠/複数者連携デジタル化・AI導入枠 (複数社連携枠は名称変更) |
| GビズIDプライム取得 | 必須 | 全枠で必須 |
| SECURITY ACTION登録 | 必須 | 全枠で必須(★一つ星以上。セキュリティ対策推進枠は★★二つ星が基本要件) |
| 省力化ナビ診断 | (未設置) | 通常枠・インボイス枠(対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠の加点項目として新設(任意・活用すると審査で加点) |
| 過去交付者の事業計画 | 規定なし | 2022〜2025年度交付者は「物価安定目標2.0%+1.5%以上(年平均3.5%以上)の賃上げ」を伴う3年間の事業計画策定が必須 |
| 事前登録開始 ※IT導入支援事業者・ITツール対象 | (2025年実施済) | 2026年1月30日 |
| 交付申請開始 | (2025年実施済) | 2026年3月30日 |
とりわけ重要なのが、2022〜2025年度に交付決定を受けた事業者への「賃上げを伴う3年間の事業計画」策定義務です。具体的には、交付申請時点の翌事業年度以降3年間で「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を日本銀行の物価安定目標2.0%+1.5%以上(年平均3.5%以上)向上させる」事業計画を策定し、賃金引上げ計画を従業員へ表明することが求められます。単なる事業計画書の提出にとどまらず、実質的な賃上げコミットを伴うため、過去にIT導入補助金を活用した経験がある事業者ほど、再申請前に経営計画への影響を確認しておきましょう。

レンタカー業務の効率化や省人化を目的とする場合、まず検討したいのは「通常枠」です。予約管理システムや顧客管理ツール、受付機のソフトウェア・クラウド部分など、現場で使うITツールを幅広くカバーできるため、自社の課題が複数領域にまたがっていても申請しやすいという特徴があります。ただし通常枠の補助対象はソフトウェア購入費・クラウド利用費・導入関連費に限られ、受付機本体やPC・タブレットなどのハードウェアは通常枠では対象外となるため、ハードウェア取得を伴う場合はインボイス枠(インボイス対応類型)の併用・切替を検討してください。
2026年度の申請枠は次の5つで構成されます(出典:SMRJ 制度概要)。
| 申請枠(公式名称) | 主な用途 | レンタカー業との親和性 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 業務効率化・DXに資するITツール導入全般 | ◎ 予約管理・顧客管理など幅広く対象(受付機はソフトウェア部分が対象。ハードウェア本体は通常枠NG/インボイス枠で検討) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 会計・受発注・決済ソフト+ハードウェア | ○ 経理担当者が活用しやすい |
| インボイス枠(電子取引類型) | 商流単位での受発注電子化 | △ 大規模商流を持つ事業者向け |
| セキュリティ対策推進枠 | サイバーリスク低減策 | ○ 顧客個人情報を扱う事業者に有効 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 (2025年度の「複数社連携IT導入枠」から名称変更) | 地域DX・複数企業による連携 | △ 地域連携プロジェクトを行う場合に検討 |
レンタカー業務に直結する予約管理システム、受付機(ソフトウェア・クラウド部分)、顧客管理ツール、クラウド型基幹システムはいずれも通常枠の対象範囲に含まれます。一方、受付機やレジ・券売機といったハードウェア本体は通常枠の補助対象外で、購入費を補助したい場合はインボイス枠(インボイス対応類型)での申請が必要です。複数店舗でシステムを横断的に導入する場合は複数者連携デジタル化・AI導入枠も選択肢になりますが、要件が厳しいため、はじめての申請であれば通常枠が無難です。
対象範囲の最新情報は、必ず公募要領で確認してください(出典:通常枠 公募要領PDF)。
2026年度は、業務プロセスの数や事業規模に応じて、補助率と上限額が段階的に区分されました。レンタカー事業者が関係しやすい主要3枠を整理すると次の通りです(出典:SMRJ 2026概要発表)。
| 枠 | 補助額(上限) | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠(業務プロセス1〜3) | 5万〜150万円 | 1/2以内(特定条件で2/3以内) |
| 通常枠(業務プロセス4以上) | 150万〜450万円 | 1/2以内(特定条件で2/3以内) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ITツール:〜350万円(機能1のみは〜50万円) PC・タブレット等:〜10万円 レジ・券売機等:〜20万円 | ITツール50万円以下分:3/4(小規模事業者4/5) ITツール50万円超350万円以下:2/3 PC・タブレット、レジ・券売機等:1/2 |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万〜150万円 | 1/2以内(小規模事業者は2/3以内) |
通常枠の補助率が2/3に引き上がる「特定条件」とは、令和7年10月から令和8年9月までの間で3か月以上、令和8年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合を指します。地方の小規模店舗で最低賃金近辺のスタッフを多く抱えているケースなどが該当しえますが、適用には書類による証明が必要です(出典:通常枠詳細ページ)。
インボイス枠(電子取引類型)と複数者連携デジタル化・AI導入枠の補助率・上限額は、申請を検討する段階で公式サイトから各枠の公募要領PDFをダウンロードして確認してください。

申請前に必ず済ませておく手続きは「GビズIDプライム」の取得と「SECURITY ACTION」の自己宣言の2つで、2026年度も全枠・全類型で必須です。これらに加えて、2026年度には「省力化ナビ」の活用が通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の加点項目(任意)として新たに追加されました。なお加点項目はこれだけではなく、クラウド利用、インボイス対応、賃上げ計画、健康経営優良法人、くるみん・えるぼし、成長加速マッチングサービス等、複数の項目が用意されています。必須と加点項目の区分は、公式のSMRJ申請前手続きページで確認できます。
電子申請の入口となるアカウントで、すべての申請枠で必須です。発行までに数週間かかるケースもあるため、申請受付開始前に取得しておきましょう。最新の発行リードタイムはgBizID公式サイトで確認できます(出典:SMRJ 申請前手続き)。
情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度で、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の専用ページから無料で登録できます。通常枠など多くの枠では「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかの宣言で要件を満たします。一方、セキュリティ対策推進枠で申請する場合は、「★★二つ星」の宣言が基本要件(必須)として求められる点に注意してください(出典:SMRJ 申請前手続き、IPA SECURITY ACTION)。
中小機構が運営する省力化ナビは、通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠の加点項目(任意)です。必須手続きではありませんが、活用すれば審査で加点されるため、これらの枠での採択を目指すなら実施をおすすめします。業種や課題に合わせた診断を受け、結果を申請書類に反映するという流れです(出典:SMRJ 申請前手続き)。
2022〜2025年度に交付決定を受けた事業者は、交付申請時点の翌事業年度以降3年間にわたり、「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を、日本銀行の物価安定目標2.0%+1.5%以上(年平均3.5%以上)向上させる」事業計画の策定と、賃金引上げ計画を従業員へ表明していることが、申請要件として追加されました。新規申請のタイミングで、自社の人件費計画と整合するかを必ず確認してください(出典:SMRJ 2026概要発表)。
以上の準備を申請受付開始日(2026年3月30日)までに整えておけば、交付申請にそのまま進めます。
繁忙期の人員確保、営業所間の情報共有、長引く顧客対応——レンタカー業界の現場負担は年々重くなっています。デジタル化・AI導入補助金は、こうした課題に対応するための設備投資の初期負担を軽くする制度として活用できます。
当社が日本全国のレンタカー事業者と日々接するなかで、補助金との相性がよいと感じる代表的なシーンを3つ紹介します。
補助金は「とりあえず安く済ませる手段」ではなく、経営の質を高める投資の後押しとして捉えるのが本来の使い方です。申請前に「どの業務を、どのツールで、どの程度効率化したいか」を言語化しておくと、申請書類の説得力も高まります。
対象です。レンタカー事業(自動車賃貸業)は日本標準産業分類上「サービス業」に分類される業種であり、運輸業ではない点に注意が必要です。したがって中小企業の定義は「サービス業」の基準(資本金5,000万円以下または従業員100人以下)が適用され、この要件を満たす事業者は申請対象となります。なお、運輸業の基準(資本金3億円以下または従業員300人以下)はレンタカー業には適用されないため、業種コードを取り違えると審査で不利になる可能性があります。申請前に必ず日本標準産業分類で業種コードを確認してください(出典:中小企業庁 中小企業の定義FAQ)。
申請できます。法人だけでなく個人事業主も対象です。副業としてレンタカー事業を営んでいる場合でも、事業規模や収益が確認できれば検討の余地があります。
申請自体はできますが、追加要件があります。2022〜2025年度に交付決定を受けた事業者には、翌事業年度以降3年間にわたって「1人当たり給与支給総額の年平均成長率を日本銀行の物価安定目標2.0%+1.5%以上(年平均3.5%以上)向上させる」事業計画を策定することと、賃金引上げ計画を従業員へ表明していることが、新たな申請要件として追加されました(出典:SMRJ 2026概要発表)。
公募回によって異なります。2026年度は3月30日に交付申請が始まり、その後複数回の締切が設定されます。最新スケジュールは公式サイトで随時更新されるため、定期的に確認してください(出典:事業スケジュール)。
必須ではありません。通常枠・インボイス枠(対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠の加点項目(任意)として用意されており、活用すれば審査で加点される位置づけです。必須手続きは、あくまで「GビズIDプライム」と「SECURITY ACTION」の2つです(出典:SMRJ 申請前手続き)。
採択は審査制で保証されません。提出書類の精度や事業計画の明確さが採否を左右します。書類作成の実績があるIT導入支援事業者と連携することが、採択率を高める現実的な方法です。
同一の申請枠での連続再申請には「12か月クールダウンルール」が設けられており、前回の交付決定日から12か月が経過していない場合、同一フレームでの再申請はできません。たとえば2026年4月に通常枠で交付決定を受けた場合、次に通常枠で申請できるのは2027年4月以降となります。異なる申請枠(例:通常枠で交付決定済 → セキュリティ対策推進枠で申請)であればこのルールは適用されませんが、複数枠を同時並行で申請することはできません。再申請を計画する際は、前回交付決定日を起点としたスケジュール設計が必要です(出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領)。
影響があります。過去に「賃上げを伴う事業計画」を提出して交付決定を受けたにもかかわらず、計画期間中に賃上げコミット(1人当たり給与支給総額の年平均成長率:物価安定目標2.0%+1.5%以上=年平均3.5%以上)を達成できなかった事業者については、次回申請時の審査で減点ペナルティが課される運用となっています。減点幅は採択ボーダーラインに直接影響しうるため、計画未達のまま再申請を行う場合は、未達理由の合理的説明と再発防止策を申請書類に明記することが採択率維持の観点で重要です。また、悪質な未達が認定された場合は補助金の返還を求められる可能性もあります。賃上げ計画は申請書類上の形式要件ではなく実質的なコミットメントである点を、申請前に経営層・人事部門と必ず共有してください(出典:デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領)。
2026年度のデジタル化・AI導入補助金は、IT導入補助金からの単純な名称変更ではなく、レンタカー事業者にとって次の3点が実質的な変化となります。
通常枠を軸に検討しながら、必須の2手続き(GビズIDプライム・SECURITY ACTION)を早めに済ませ、余裕があれば省力化ナビによる加点も狙う——これが現実的なルートです。受付機(ソフトウェア・クラウド部分)やREbornのようにレンタカー業に特化したシステムを補助金で導入できれば、初期投資の負担を抑えながら現場の課題に手をつけられます。受付機本体などハードウェアの購入費を含めて補助を受けたい場合は、通常枠ではなくインボイス枠(インボイス対応類型)の活用を検討してください(出典:SMRJ 制度概要)。
最新情報や申請スケジュールは、必ずデジタル化・AI導入補助金2026 公式サイトでご確認ください。